巨大アワビの杯
昔浪花の浮瀬（うかぶせ）亭という高級料亭には八つの貝の酒杯がありました。それぞれ「浮む瀬」
「君之為」「鳴戸」「瀧音」「吾背子」「幾瀬」「春風」「＿枝」という銘が付いていましたが、最も尊重
されていたのは「浮む瀬」という名の巨大な鮑の杯です。平時は長曽我部元親の陣羽織であったと
伝える唐錦の袋に納めて珍蔵していました。この鮑には十一の穴があり、これを塞いで酒を入れると
７合半入ります。満酌して飲み干した客は名誉として暢酣帳（ちょうかんちょう）に名前が記されました。
この料亭の元の名は「晴々亭」でしたが、巨大鮑の杯が有名になり、浮瀬亭と呼ばれるようになりました。
ちなみに図示のマダカアワビは殻長２１０ｍｍ、五つの穴があり７００ｍｌ（３．９合）の酒が入ります。
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